「で、こちらが診察室。今日は午後休診なので中までどうぞ」
壁だと思ったところに扉があったのだ。
統一された、天井まである白い壁。ここにも開きかけた薔薇の花をモチーフにしたデザインが微かに入っている。
ぱっと見には分からない、見えにくいところに、スライドドアの取っ手があった。音も静かだ。
白い壁の半個室の部屋には、ダークブラウンの刺繍入りのカーテンが掛かっている。
捲ると、ほどよい照明の白い診察台。これも恐らくオーダーメイドだ。
治療台と治療状況、データを映すモニター。
基本は同じ機械だ。
ただ、全ての機材にこだわりが見える。
「あっ、ちなみにベースはホワイトニング、審美歯科、矯正治療、インプラント。明らかな虫歯治療は稀です案外」
見た目にこだわるのか。やっぱり。
「はあ…」
「どんなイケメンでも歯が汚いと台無しですからね。磨くだけにも来られますよ。プロですからこっちは。実費ですけどね」
そう言って歯を見せて笑う叶多さんは、勿論真っ白だ。