「あの、ところで、つかぬことをお尋ねしますが」


改めておずおずと私。


「こちらに在籍してお仕事をされるとか」


そうなると実家のお母さんも心配だ。


「ああ、それは大丈夫だ。兄貴」


言うと、いつかのインテリ眼鏡のイケメンを呼んだ。


「まだ話してなかったのか」


「なんのお話ですか??」


「夏子さんのことは話しただろ。ご主人で俺の兄貴。匡輔(キョウスケ)」


「あっ、その節は…」


手切れ金と渡された札束入りの封筒を突き返したとも言えない。


「どうも。まさか本当にこうなるとはね」


半ば呆れ顔だ。
そりゃあこんな庶民代表のガサツ女が婚約者になるとは思うまい。


私が一番驚いている。
顔がひきつる。この人も、何だかんだで一族なんだと。


「はは…」


「まあ、お約束だと思って、一旦忘れてください」


「何の話だ」


怪訝な顔をする斎さん。


「な、何でもありません。それより」