「あっ、いや、あの」


それもそうだと。
ゴホン、と咳払いすると、


「では、失礼して」


靴を脱いで上がる。
狭い玄関に、大きな靴が増えた。こんなに靴があるのは初めてのことだ。


改めて畳の部屋に上がると、濃紺のトレンチコートを脱いで、スーツ姿で正座して頭を下げる真部さん。


「お嬢さん、文李さんを、僕にくださいませんでしょうか??…今から海外に行くことになるとは思いますが」


「こっ!!ここ、こちらこそ!!……って、えっ!?いま??今??これから??」


「はい。急遽1ヶ月の出張になって。それでどうせならと、迎えに来ました」


「え"っ!?え"~っ??!!」


「ていうか、文李パスポート持ってるの??」


「あっ、先月作らされた。必要かもしれないからって」


「なんでそんな大事なことを~」


「こんなことになるなんて思わないし」


言ってから、ふと気づく。


「………今のは、………プロポーズ………ですか???」


「そこ!?ってあれだったの???!!」


髪をわしわしっと掻くと、