…一日のイベント(入学式)を終えた二人は、弓道場に向かう。

入学式の当日から練習が許されるのは、この二人だけだろう。

…紅もまた、同じ弓道の推薦で入学している。

「お前らだけズルいぞ。俺だって弓道部なのに」
「…三ノ宮は推薦じゃないじゃない」

三ノ宮の言葉に、碧が済ました顔で言う。紅は相変わらず、三ノ宮から離れて歩いている。

弓道着に着替えた二人が、それぞれの更衣室から出てきた。…本当に、様になる。

三ノ宮は、二人のこの姿を見るのが好きだ。

「…ぁ、あそこの桜、綺麗だね、練習する前に、挨拶に行こう。ここの主だよきっと」

そう言いながら、弓道場の裏の小さな丘をかけ上がっていく。それを笑いながら、二人はついていく。

「…挨拶って。ただ、見たいだけじゃん」
「…本当に、紅は乙女だわ」

「…碧も、少しは見習った方が「うるさい!」

三ノ宮の背中を、碧は強く叩いた。

…。

「…キレイ」「…桜なんてどれも同じ」

「…すごい、綺麗」

桜を見上げる三人に、突風が吹く。

髪が乱れたのを碧が直す。そのしぐさを綺麗だと思うのは、三ノ宮。

そう、三ノ宮はずっと、碧の事が好きなのだ。

「…碧」
「…何、三ノ宮?」

…その時だった。突然の地震。大きな揺れに、紅が足を踏み外して、坂を転げ落ちそうに。

それを碧が助けにはいる。

そんな二人を助けようと、三ノ宮がてを伸ばした。


…。



「…っー。碧?…紅?」

一緒に転げ落ちた三ノ宮が起き上がり、二人を呼んだが、どこにも姿はなかった。