満開の桜並木を弟の紅(こう)と、歩く。

「…碧(あおい)桜綺麗だね」

紅が姉である碧に笑顔で言う。

「…本当に、桜が私達の入学を祝ってくれてるんだよ」

『瓜二つね、あの二人』
『二人とも綺麗な顔立ち』

同じ制服を来た生徒達が、二人を見てヒソヒソと話をしている。

それを聞いた二人は、顔を見合わせて笑う。

…そう、紅と碧は、誰もが認める一卵性双生児、双子だ。

「早く行こう!同じクラスか気になるよ」

そう言って、走り出した紅。紅は、一人の時はとても物静かな人見知り。でも、碧にはいつもはしゃいだ顔を見せる。

「わかったわかった、そんなに走らないで!信号変わるよ!」

紅とは正反対の碧は、スポーツ万能で、とても落ち着いている。この高校も、弓道の推薦で入ったほどだ。

走っていく紅を、碧は追いかけた。

…各クラス、それぞれに名前が書かれていた。

「…やった、同じクラスだよ」
「…ぁ、本当だ」

「…また、お前らと一緒かよ」

後ろからそんな声が聞こえ、紅と碧は振り返った。

「「…三ノ宮」」

二人の声が重なる。二人のシンクロ具合が可笑しくて三ノ宮は笑う。

紅は、碧の後ろに隠れた。三ノ宮は紅の天敵だ。気弱な紅をいじめるのが、三ノ宮の毎日の日課らしい。

そんな三ノ宮から紅を守るのが、碧のこれまた日課だった。

「…もぅ高校生なんだから、いい加減止めたら?」

三人の間に、冷たい風が吹く。三ノ宮は満面の笑みを見せた。

「…嫌に決まってんじゃん」

三ノ宮の言葉に、二人がガックリ肩を落としたのは言うまでもない。