四月に入ると私は毎日のように学のマンションで過ごしていた。


マンションのコンシェルジュには半同棲だと思われていたかもしれない。



「葉月、仕事で暫くアメリカに行ってくる。」



学は数週間前、アメリカに飛び立った。毎日のように一緒にいた人がいなくなる寂しさを感じていた。



「葉月、元気出せよ。」



誠に心配されるほど、顔に出ているのだろうか。



「元気よ。誠もしっかりね?」


「ああ、また後で。」



会社に入ると私達は自席に向かった。


今は仕事に集中するべきよね。



「吉良、来週の交渉の資料は大丈夫か?」


「はい。後で確認をお願いします。」



課長の声に大きく返事をした。


大きく深呼吸をして業務に取り掛かった。



『葉月、心は決まったのか?』



昨日、父に言われた言葉を思い出す。



『いえ。』


『そうか。葉月、納得する結論を出しなさい。私は葉月の幸せを一番に考えているから。』