「先程は大変失礼しました。」



私は深く頭を下げた。



「何方か服を届けて貰えませんか?水でダメにしてしまってので……。」



私が申し訳なさそうに言えば、にっこりと微笑んだ中島健が頷いた。



「じゃあ、俺が。」


「ありがとうございます。」



私はホテルの部屋のカードキーと服を手渡して、もう一度御礼を言った。


優しそうな健がラウンジを出ていくのを見送る。


私は視線を本来の目的の男に定めた。



「美月、彼よね?」


「えっ?お姉ちゃん?」


「いってくる。」



私は足を踏み出そうとしたが、その手を掴まれ振り返った。



「止めとけば?余計に美月ちゃんが傷つくだろ?」


「傷つく?」


「何度も恥をかかせる必要ないだろ?って事。」



座ったまま、私を見上げる篠崎駈を見下ろす。



「妹の気持ちも考えろって事。美月ちゃんは嫌がってるんじゃない?」



美月に視線を向ければ、私から視線を逸らした。