私は男の隣を通り過ぎようとしたが、男の腕が私の腕を掴んだ。



「離せ。勝手に触るな。」



学が男の手を払った。私と男の間に立つ学の雰囲気が怖い。



「俺も同意だ。ここは女遊びの場所じゃない。他所でやれ。」



男が黙り込んだまま、学を睨んでいる。



「俺はアッパーの人間だ。会員の資格も金も………ちゃんと払ってる。」


「高級VIPラウンジの品位を落とす行為は資格と金があれば許されるのか?」


「…………それは………。」


「詰まる時点でお前も分かってるって事だな。」



学が私の肩を抱き寄せて、男の隣を通り過ぎようとした。



「二度としない。」



男の声に私達の足が止まる。



「二度としない。だから出入禁止だけは何とかしてくれ。」



学が男に振り返った。



「次、発覚したら二度と入れないと思え。」


「学!」


「葉月、行くぞ。」



学が強引に私の肩を抱き寄せて歩き始めた。