契約彼女にした理由

携帯の画面が明るくなる。学からの着信だ。



「学?」


「葉月、帰れるか?」



時間を見れば22時だ。私は資料を閉じた。



「帰れるよ。」


「エントランスで待ってる。」


「わかった。」



私は荷物を整理して会社を出た。エントランスに立っている学を見つける。



「学、お待たせ。」


「いや、今、来たところだ。」



学の手が自然と繋がれ、私もその手を握り返す。


外に出れば一気に寒さが体に染み渡る。



「寒い。」


「ほら。」



学のコートのポケットに二人の手を突っ込む。



「ふふっ。」


「何だよ。」


「ラブラブのカップルみたいね。」


「………嫌か?」


「嫌じゃない。暖かいね。」



体を寄せて歩く私達はラブラブな二人に見えるだろう。


それも悪くない自分がいる。


学の隣は心地よい。



「葉月は忙しいのか?」


「うん。来週の出張までに資料を作成しないと。」


「出張?」