契約彼女にした理由

誠の腕が私を囲うように本棚に置かれた。驚きに動きを止めた。



「葉月、本気になるな。」



耳元で囁かれる声に体がビクリと揺れた。



「本気になるな。もうすぐ期限だろ?27の誕生日が来たらお見合いする。違うか?」


「何で誠が?」


「俺が相手だからだ。」


「えっ?」



誠の体が離れていく。



「見合い相手は俺だ。葉月との結婚が決まれば、俺は吉良家の婿養子に入る。親父さんが望んだ結婚条件だからな。」


「…………。」


「俺の家には他にも男兄弟が二人もいる。長男も次男の兄貴もいる。」


「誠は入社した当時から私とお見合いする予定だった?」


「それはない。だが、葉月となら結婚しても楽しいと思ったから、親父から頼んで貰ったんだ。」



誠は大手企業の御曹司だ。ただ3人兄弟の末と言う事もあり自由ではある。



「葉月、本気になるなよ。」



誠はそれだけ言うと資料室を出ていった。私はその背中をじっと見つめていた。