「ちょっとお姉ちゃん!」


「…………どういうつもりだ?」



水を掛けられた男の低い声が響いた。静まり返る店内に黒服が駆け寄ってくる。



「篠崎様、大丈夫ですか?吉良様も困ります。」


「浜崎、ここは会員制VIPラウンジよね?こんな男を会員にしてるの?」


「吉良様。篠崎様はこのビルのコンサルティング会社に勤務される方です。」


「コンサルティング会社?こんなチャラい男が?」



目の前に座っていた男が立ち上がった。私より随分と背が高く、私は後退りをした。



「何のつもりだ?」


「身に覚えがない?そんなに女を騙してる?」


「騙す?」



私は美月に視線を向ければ、横に大きく首を振っている。


私は美月と前に立つ男を交互に見た。



「美月?」


「お姉ちゃん、違うの。」


「はあ?」


「だから違うの。私が言ってるのはその奥のソファーに座ってる男。」



私は目の前に立つ男の横から、更に奥にあるソファーに座る同じ様な服装の男を見つけた。