真っ直ぐに俺を見つめる俺と同じ瞳は揺らぎなくじっと見据えている。



「学、母さんは幸せそうに見えなかった？」


「………いや。」


「ふふっ、なら母さんは幸せだったのよ。二人の息子達に恵まれて。」


「………。」


「何を悩んでるの？」



母が昔っから変わらない優しい笑みを向けている。


そう―――母はずっと幸せそうだった。



「俺さ、ずっと一緒にいたい女がいる。でも…………。」


「でも？」


「あの男………いや、親父みたいになりたくなくて………結婚に踏み切れないんだ。」


「…………母さんのせい？」



母さんの寂しそうな顔が目に入る。



「今は離れたくなくても、この先は分からないだろ？」


「そうね。それは誰にも分からない。」


「でも他の男と結婚する葉月も想像したくない。ずっと俺の傍にいて欲しいって思ってる。」


「だったら答えは出てるじゃない。」


「…………。」


「後悔するより行動するべきだと思うわよ？」