俺は目の前にいる葉月を抱き締めた。


この温もりに安心していく。絶対に手離せない女の温もりに―――。



「葉月、聞いてくれるか？」


「うん………。」



葉月の言葉に目を閉じた。



「仕事でアメリカに行った時、俺はお袋に聞いてみたんだよ。」


「聞く？」


「幸せか？って。愛人なんて立場でお袋は幸せか？って。」


「………。」



俺は葉月に離れていた一ヶ月の出来事を話し始めた。


葉月はずっと無言で俺の話を聞いていた。時折、俺の腕を擦る葉月の手に安心していた。


一ヶ月前、俺は仕事でアメリカに向かった。そして母親に聞いてみた。



「お袋、あんな男の子供を産んで後悔してないか？」


「学、お父さんでしょ？あんな男なんて言わないで。」


「だけどお袋はあの男のせいで辛い想いばかりしてきただろ。」


「辛い想いばかりじゃないわよ。確かに辛い事もあったけど後悔なんてしてない。」