古手川課長との触れ合いは、その後も特別多くなることもなく週末を迎えそうだった。

金曜日の午後になると部署の女子達は浮き足立ってて仕事どころでは無くなる。

合コンに参加する人達は自身の着てきた服やメイクの話で盛り上がってて、私みたいに参加もしないし予定もない者とは話も合わない。


合コンに関係のない未希は、週の半ばから具合を悪くして休んでた。

課長と食事した日に聞いた私の売り込み話を直接問い質してみようと考えてたけど、そのチャンスもないままだ。



『未希、体の具合どう?大丈夫?』


LINEでメッセを送ってみた。
急いで帰ることもないし、お見舞いにでも行ってみようかと思って。


『大丈夫。吐き気が酷くてしんどいだけ』


レモンを齧ってるスタンプが貼られてる。


『えっ…まさか妊娠!?』


『うん。9週目だって』


『うっそー!おめでとーー!!』


涙腺が崩壊したスタンプを貼ると、『グラッチェ』とウインクをしたスタンプが返ってくる。


(そうか〜。未希が妊娠かぁ〜〜)


お母さんになるんだ…と思うと嬉しい。
でも同時に、仕事はどうするんだろうと思った。


『未希、仕事辞めるの?』


話し相手が居なくなる…と思うと寂しかった。


『辞めないよ。産休は貰うけど、産んでも働かないとやっていけない』


未希の旦那さんは役職もまだ付いてない。

年功序列的なオフィスで働くから、出世なんて当分望めそうにないんだ。