「うん。ロトで6000万程当たってね」


課長の顔を見ながら(それはウソだ)…って思う。


「家でも買おうかなと考えてる。庭付きの一戸建て」


絶対にウソだろうって思うと切なくなった。

どんなに私の目の前で泣いても、課長は先輩達と同じようにしか私のことを見てない。



「一戸建てのお家ですか…。素敵ですね」


否定もせずに言葉を合わせた。


「私、結婚して専業主婦になるのが夢だから、いいな…と思います」


私のことを見下ろしてた課長が、何かを言いたそうに唇を動かしかけた。


首を傾けると目線を変え、「そっか」とだけ零して歩き始める。


その踵を見ながら自分の足も前に出した。


一瞬だけ掴めかけた様に思えた課長が、やっぱり掴めない相手だと、再認識された夜だった。