「ミィは感心な母猫でした。その頃、私は小学校の5年生で、学校帰りには毎日様子を見に寄ってたんてす」


母猫よりも仔猫を見たかった。

小さくて可愛い仔猫達は、茶トラが2匹と黒白が1匹でミィと同じ三毛猫はいなかった。


子猫達はいつも大抵母猫のミィが大切そうに懐の中に入れて眠ってる。

おっぱいを飲んでることもあったり、体中を舐めて貰ったりしてることもあった。


「2、3週間くらいしたら目が開きだして、ヨタヨタと動こうとするんですけど、直ぐに腰が砕けて歩けない様子でした。でも、ミィは絶対に助けたりしないの。毅然とした態度で、歩けるようになるまで見守ってた」


写真を見ながら懐かしい思い出を振り返った。

ジョンを亡くしたばかりの課長も、その話に耳を傾けていた。


「そんなある日、いつものように見に行ったら仔猫もミィも居なくて。どうしたのかと尋ねたらオバさんが『捨てたよ』と言ったんです」


野良猫に住まわれたら大変だと思ったんだろうと思う。
残念だったけど、仕方のないことだと諦めるしかなかった。


「やっと仔猫達が歩き始めたばかりだったからミィは抵抗したと思うんです。どうしただろう…と心配になって、仔猫達を探して歩いたんです」


出会えたらエサをあげるつもりでキャットフードを持ち歩いた。

一向に出会わないから、町内から逃げ出してしまったんじゃないのかと思った。