『コーン』な上司と恋なんて

「………ウソ…」


ボソッと囁いた言葉に俺は首を横に振った。

「事実だ」と言ったら、テーブルの上に置いてた芦原の手が滑るように落ちていった。


丁度そこへ料理が運ばれてきた。
俺はビールのお替わりを頼み、芦原は呆然としたまま、自分の目の前に並ぶ器の中を見ている。


「とにかく食べよう」


声をかけると徐ろに指を動かして箸袋を握った。

割り箸を割ろうとしているのに力が入らないらしく、それを代わりに割ってやった。



「すみません……ありがとうございます……」


そう言いながらもぼぅっとしている。

やはり食べてからにしないとマズかったな…と思ったが、今更口にした言葉を取り下げる訳にもいかない。


箸を勧めながらポツポツ…と教えた。


ジョンのお腹に癌が巣食い、明らかに体調が悪くなったのは1ヶ月位前からだと言った。


「あいつは俺が子犬の時に同級生の家から貰ってきたんだ。俺は当時から家を離れて仕事をしていたんだが、ジョンは俺に一番懐いていた」


俺の話を聞きながら芦原は時折箸を止める。

じっ…と俺の顔を見ていたり、何かを考え込んだりしていた。


「従兄弟が電話してきた時は危篤状態だと知らされた。持って数時間だろうと言われ、絶対に間に合ってやると思った」


「…それであんなに急いで帰られたんですね」


初めて納得がいったように芦原が声を発した。