『コーン』な上司と恋なんて

予期していたことではあったが、受け止めるにはまだ時間が経ち過ぎていない。


芦原が逃げた後、少し間を置いてから非常扉の中へと入った。

足の速そうな彼女の背中は、既に15メートル位先を歩いてる。


さっきは不覚にも彼女の着ていたカーディガンを見て思い出したことがあり、ぎゅっと胸が苦しくなってしまった。

溢れ出しそうな思いを抱いたまま仕事に入る気が失せて、部署を飛び出しただけなんだが……。



(……さて、それを話しても恥ずかしくないだろうか)



芦原は聞き上手だと白河 未希から聞いてる。

顧客との電話対応でも、きちんと話を聞いてやっているのは見ている。


事務処理は一際鈍くて時間もかかるが、どうにもならない程度ではない。

外見も真面目そうな雰囲気がしてるし、目を引くほどの美人でもないが、顔立ちはいい方であると思う。


可愛い顔をしてる。目は一重だけど鼻の格好はいいし、唇も小さくてあどけないし。



要するに日本人女性らしい…と言えばいいか。

髪の色は明るめなブラウン系に染めているが、本人の雰囲気には合ってない。


(染めなくてもいいんじゃないのか。その方が芦原さんらしいだろうに)


サラサラの後ろ髪が触れた感触が指先に残っていた。

彼女の真面目な眼差しに、胸が打たれてしまいそうになった。