あの宝クジの話みたいに、その場だけのウソで通される話題もあるかもしれない。

あれも本当は当たってるけど、「家でも買えそうな高額だ」と、単純にツヤを付けて言っただけだと思いたい。


「私には古手川課長のことがミステリアス過ぎて掴めない」


ボソッと小言を話せば、未希は「分からないでもないけど」と認める。


「私達には踏み込めないものがあると言うか、だからこそ翼には踏み込んで貰いたいような気がしたのよね」


「私に!?あんな高嶺の花みたいな人なのに無理だよ。何言ってんの!」


あはは…と笑い飛ばしてお昼を済ませた。
部署のデスクに戻ると、内線電話が響いてる。



「……はい。庶務課、芦原です」


慌てて走り寄り受話器を取り上げた。
受付の社員から「外線からお電話です」と言われ、「私にですか?」と聞くと、「ええ、古手川さんから」と言う。


古手川さんと言うと課長から?
どうして課長が私に電話なんて……。


不思議に思いながらも「そうですか」と答えた。

引き継ぎのボタンを押す音がした後で課長の声が聞こえてきた。




「……芦原さん?」


元気のない声に驚きながら「はい。そうです」と返事をした。
課長は確かに風邪っぽい声で、「昨日は済まなかった」と謝った。


まさか、それだけの為に電話をかけてきたんだろうか。
出社してからでも間に合うし、早く言っておきたいならLINEのメッセでも良かったのに。