宣言通り、翌日の課長は欠勤だった。
部長には「風邪を引いた」と言ったらしく、「酷い鼻声だった」と心配していた。


私はそれを咄嗟にウソだと判断した。
昨夜の課長は元気そうで、だからこそ私に一杯だけ付き合ってくれないかと誘ったんだ。


ウソを吐かなければいけない様なことが実家で起きた。

誰かが事件に巻き込まれたとか行方不明になったとか…か。

慌てて帰り出す前に沈み込みそうな声を出してた。

事件や事故の割には電話を切る時には「ありがとう」と言ってた。


金澤さんのお店で彼女とコソコソ話してた内容も気になる。

まだ何かを聞きたそうにしてた彼女には、何も言わなくて良かったのか。


私はあの後、駅のコンビニでワインのミニボトルとチーズを買って帰った。

チーズをツマミにワインを煽り、おかげで今朝は顔が浮腫んでいる。



「昨日はお疲れ!」と声をかけてきた未希は、私の浮腫んだ顔を見て「何があったの!?」と驚いた。


「んー、ちょっとしたアクシデントがあってね……」


詳しく話す気にもならず、午前中は浮腫んだ顔のままで仕事をこなした。

お昼までには顔の浮腫みも減り、重かった瞼も開けやすくなる。


社食に行ったところで改めて何があったのか言ってごらん…と未希に言われた。

私は折角の楽しみが一本の電話で無くなったことだけを話した。


「ほうほう。あの古手川課長から誘われたんだ」