私は課長の背中を目で追いかけ、一体何があったんだろうかと思いを巡らせる。


振り返ればさっきまでいた店の外灯が消えようとしていて、消えた途端に辺りの空気が冷たくなった。

課長との接点も消されてしまい、ポツン…と佇む自分の足元が暗い。


コツン、コツン…と歩き出しながら走り去っていった人のことを思った。



古手川課長は本当に掴めない人だ。

今までもそうだと思ってたけど、今夜は余計にそう思う気持ちが強い。

実家で何があったか知らないけど、簡単に説明くらいして帰ってもいいんじゃないのか。



「そりゃ私は不出来な部下だけど……」


急に手離された子供のように不満が心の中に広がった。

仕方ないんだ…と言い聞かせながら、まるで悠生と同じだと思う。

子供みたいに今更拗ねて、どうなるもんでもない。

だけど……



「……こんなのってないよ」


途切れてしまった最後の接点。

こんな奇跡は多分もう二度と無いと思ってたのに。



「ちぇっ。いいよ。ウチで飲み直すから」


踏ん切りをつけて大股で歩き出した。


夜風の中を突っ走ってるだろう課長のことを、ずっと頭に思い浮かべていたーーー。