『コーン』な上司と恋なんて

女子達に囲まれてる課長を見遣る。

部下の私でも嫌だな…と思うんだから、金澤さんはもっと嫌な気分でいるんじゃないだろうか。


せめて自分だけは課長に近寄るまいと決めて徹した。

9時にはお開きにしようと話が出だして、ようやく課長も解放されることになった。


幹事として全員を店から見送り、やれやれと言いながら首元のネクタイを緩めている。



「お疲れ様でした」


店の出入り口に佇んだままで挨拶をした。
課長は私を見下ろし、「芦原さんこそ」と労う。


「俺が動けない分よく働いてくれてたね。こっちは何も手伝えなくてごめん」


部署のクレーマー処理の達人は、私みたいに無能な部下にもちゃんと謝る。

それも本心からではないのかもしれないけど、嫌味でもないから受け入れた。


「私は課長が先輩達の面倒を見てくれたから助かりましたよ」


トイレにも行けないくらいの人気ぶりでしたね…と話すと、「全くだ」と笑う。

今日が最後の接点になるんだと思うと切なくて、彼女がいてもいいからもう少しだけ話したいな…と考えてしまった。



「本日はご利用頂きまして、ありがとうございました」


コックコート姿で現れた金澤さんは、そんな私の夢を呆気なく流してしまうくらいに綺麗に見えた。


「こちらこそ。長い時間店をお借りしまして」


デキてる関係の人にも敬語を使い、如何にも仕事上の付き合いだけのように振る舞う課長。