まともに手伝えずに終わるかもしれない。

課長もそれが分かってるから唇を締めたんだ。
固くなった表情からして、私以外の人がいいと思ったに違いない。


(ゴメンなさい、課長。できるだけの事はお手伝いしますから)


そう思いながらチラッとデスクの方を覗き見る。
課長は部署の男性陣と話をしながら柔かな笑みを浮かべている。

休み中にあった話をしているみたいで、やたらと盛り上がってるのが羨ましい。


(あーあ。私も課長と話したい……)


お店の相談しながら話ができたらいいな。
そしたら、お正月の話も聞けるのに。



(課長はあのお稲荷さんに参ったのかなぁ)


ジョンというワンコを連れて毎朝散歩に行ったんだろうか。
私があげた御守りを今もワンコの首輪に付けてくれてるだろうか。


(あの扇のアクセはどうだろう。いよいよ彼女に見つかって、外されてるかもしれない)


気も漫ろに午前中の仕事を済ませた。
お昼休みは未希と一緒に社食へ行こうと話してたけど。



「芦原さん、新年会のことを話し合っておこう」


部署を出ようとしてるところを呼び止められた。
唖然としてる私に代わって、未希が「はい!」と返事をする。


「ほら、行きなさいよ。早く」


力一杯前に押し出されて振り向くと、未希は親指を立ててウインクした。

「頑張れ!」という意味なんだろうけど、こっちはドキドキとするばかり。