昨日も作ったじゃないの…と言われ、「でも悠生が楽しみにしてるから」と反論した。


「悠生はパティシエになるのが夢だから直ぐにお菓子を作りたがるのよ」


姉は呆れながら「食べた後は歯磨きをしてね」と声をかけた。

悠生は「はーい」と返事だけは良くして、カチャカチャと粉を混ぜ込む。


「ところで翼、後で霊園に参るんでしょ?」


姉の言葉に顔を上げ、「うん」と返事をした。

うちではお正月になったら毎年皆でお参りに行く場所がある。
姉はその帰りにスーパーへ寄り、海鮮鍋の材料を買おうと提案した。


「由輝(よしき)さんの車だけじゃ全員乗れないし、食材は翼の車に乗せて」


由輝さんというのは姉の旦那さん。
自分の両親との同居を躊躇いもせずに了解してくれたマスオさんだ。


「いいよ」


嫌だけどいいと答えたら悠生が私の車に乗りたい!と言いだした。


「ダメよ。チャイルドシートも付いてないし」


ピシャリと言い放つ姉に持ってたヘラを振り回して抗議する悠生。


「ヤダ!つばしゃの車に乗るっ!!」


言い出したら聞かないもんだからテーブルの上が粉だらけになっていく。


「悠くん、粉が落ちるから振り回さないで」


止めて…と声をかけながらヘラを取り上げ、やれやれという感じで姉が折れる。


「わかった。翼の車にチャイルドシート付け替えておくから」


「ヤッター!」