『何処でこんなイケメン引っ掛けたのよ』


やるじゃない…と小声で囁かれ、返答に困ってしまう。
何処もかしこも、オフィスに勤めだしてからの上司だ。



「まぁ、課長さんなの?」


「その若さで役職に着けるなら将来は有望だな」


課長から名刺を貰い、両親の目が輝く。


「いえ、俺みたいなのは、まだまだです」


十分上の役職にも着けそうな人が謙遜する。
それなりな仕事しかしてなかった私が捕まえてきた上物に、両親はすっかりご満悦な雰囲気だ。


「翼みたいな子でいいの?古手川さんならもっと素敵な女性との出会いもあるでしょ?」


「そうだぞ。今からこんなのに絞らなくてもいい」


「こんなの」とか言われたし。
あんまりなんじゃない?


「翼さんは素敵な人ですよ。思いやりがあって、面倒見が良くて」


面と向かって褒められると嬉しくて、ついつい頬の肉が緩む。


「料理も上手いですしね」


「えっ?翼、あんたあのヘタな創作料理を食べさせたの!?」


姉の一言は聞かなかった事にしておきたい。
私はお菓子を作るのは好きで幾らか得意分野には入るけど、料理だけは一向に上達しないのが悩みなんだ。


「うわ〜、古手川さん気の毒ね〜〜」


母までがそう言った。
この場面で私をこき下ろして何が面白いんだ。


「ママもバーバもつばしゃをイジメちゃダメ!」