私の目の前では、険悪なムードが漂ってる。

父と課長ではなく、悠生と課長との間が険悪なんだ。


「おじしゃん、誰!?」


5歳になっても舌ったらずな悠生の言葉に課長がクスッと笑う。
笑われた悠生はカッと顔を染め、余計に彼を睨み付ける。


「悠くん、この人はね…」


私が説明をしようとすれば、課長は「いいから」と手で止めた。


「初めまして、ゆうき君だね。おじさんは『こてがわ ひろゆき』と言います」


膝を折り曲げ、悠生の目線に合わせる課長。
ニコニコしているけど、内心「おじさん」扱いには傷ついてるはず。


「翼さんと同じ会社で仕事をしています。それから、彼女の彼氏でもあります」


「彼氏」だと自分自身を紹介しながら照れる。
その課長を横目で見ながら、私の方まで顔が熱くなった。


「カレ、シ〜〜?」


ワザとらしく言葉を区切った悠生。
目は、ますます胡散臭そうな人を見る目に変わる。


「そうだよ」


課長はへこたれもせずに悠生の視線と向き合う。
いい加減に助け舟を出してよ…と思いながら、悠生の後ろに立つ姉を振り返った。



「悠生、ちょっと向こうで遊んでてくれる?」


姉は私の視線に気づき、さっきまで遊んでたブロックの山を指差してくれたけど……


「ヤダッ!つばしゃの側にいる!!」


ガシッと腰に腕を巻き付けてしがみ付かれた。
その途端、ピクリと課長の眉尻が上がった。