うどんが届けられるまでの間、あれこれ課長に質問するつもりでいたのに予想以上に早く届いてしまった。

ガッカリする私の目の前に置かれた丼には、あのお社に供えられてた三角揚げと同じくらいの大きさの油揚げが乗ってる。

揚げから出たタレが、お出汁を醤油色に染めている。
端っこは丼からはみ出て、厚みもぱっと見、1センチくらいはありそうだ。



「大っきな揚げ!」


目を見張った。


「デカイだろ。でも、食べると案外あっさりしてて直ぐになくなるんだ」


割り箸を渡してくれながら説明を受ける。
この大きさの物が、あっという間になくなるなんて本当だろうか。


(残ったらどうしよう。食べかけなんて見た目も悪いし)


ドキドキしながら竹箸を割った。
課長の食べ方を見てると、先にお出汁を吸ってる。


(そうだよね。先ずはお出汁の味を確かめないと)


丼を持ち上げて吸った。
揚げから落ちたタレの味が、出汁の中に滲み出して甘い。



(美味しい。結構好きな味かも)


うどんの中に箸を入れ、どちらかと言えば太めなうどんを食べる。

もっちりとした食感は噛み応えもあるけど美味しい。
多分、手打ちなんだろうと思い、油揚げに箸を伸ばした。


角を持ち上げてみると意外にも軽い。
それでも、いつも食べる揚げよりかは遥かに重いんだけど。

三角形の角から嚙みついて食べると、噛んだ瞬間から甘辛いタレの味が口の中に広がっていく。