課長の実家へお邪魔した翌週、約束通りにミィのお墓参りへ行った。

動物霊園は街を望める高台にあって、真言宗のお寺の隣に併設されてる。
同じ敷地には焼却場もあり、ミィの遺体もそこで火葬してもらった。


芝生の敷かれた一角には、人間と同じ様な墓石が建てられ、飼い主達の思いが込められた言葉が彫られてある。


「幸せだったよ」
「笑顔をたくさんありがとう」
「いつまでも家族だからね」


御影石に彫られた文字を見つめながら、私達はプレハブ小屋へ向かった。

引き戸を開けると直ぐ脇には仏壇があって、弥勒菩薩像が滑らかな身体つきをして立ってらっしゃる。


いつものようにお賽銭を収めて線香に火を移し、拝んだ後は振り返ってミィの遺骨が置かれてある棚に進んだ。


大きなボックス棚の上から3段目。小さなマス目の一箇所にいるミィ。

私がその前で立ち止まると、課長も足を止めた。



「来たよ。ミィ」


真っ直ぐに腕を伸ばし、遺骨袋を抱き上げた。

こうしてるとミィの温もりを思い出して涙が滲んでくる。
最後の日に戻った様な感覚がして、ほろ苦さが込み上げてしまう。


「………」


何も言わずに摩り続ける私の肩を課長が優しく抱いた。
その腕の温もりを感じながら、そ…と棚に戻した。

課長は棚を覗き込むように膝を折り、一緒に飾ってある家族写真を見遣る。



「これが翼の家族?」