風を背中に背負いながら誘った。


「うん!」


子供のように抱き付いてくる彼女の肩を抱いてやる。


「あったか〜い」


嬉しそうに擦り寄ってきて、まるで猫みたいな仕草だ。


凭れられながら境内へ続く階段を歩いた。
手水舎で手と口を清め、社殿に続く階段を上る。

賽銭を投げ入れ銅製の鈴を鳴らした後で、大きく柏手を打ち頭を項垂れた翼は、熱心にお礼を申していた。


呆れるくらいに長く頭を下げてた女の顔が振り向き、「お待たせしました」と笑う。

それに笑みを返してから、俺は彼女の手を取った。



「翼」


名前を呼んだら「何?」と小首を傾げる。

言うなら絶対にここで…と決めてた言葉を、目を見ながら告げた。




「俺とずっと一緒に居て欲しい。専業主婦になってもいいから結婚しよう」