「私…」


俺の顔を見つめて芦原が話しだした。
その顔を見返して、思い出話でも始まるのかと思ったら……


「家族中でお正月に三社参りをするのが恒例だと言ったでしょう。実は毎年、神社以外にも必ず行く場所があるんです」


視線がジョンの骨袋に向けられる。
それを追うようにして、自分も窓辺に目を向けた。


「……霊園に居る、ミィの所へお参りに行くんです」


ジョンを見てた目が振り返る。
向けられた眼差しを見直し、「霊園?」と聞き返した。


「はい。動物霊園に遺骨を預けてるんです。私達はミィと一緒に居ると落ち込みが酷くて、何も出来なくなるから」


話では家族全員がミィをとても愛してたそうだ。
特に彼女は、今でも骨の前に立つとウルウルと涙が浮かんできてしまうらしい。


「死んだなんて思いたくないと言うか…。遺骨を抱いてると、生きてた頃のことが思い出されて仕方ないんです」


大事そうにジョンの骨を抱きしめた姿を思い出した。
同じようにきっとミィのことも抱いてる筈だ。


「だから、課長のようには一緒に居れなくて…」


強くて羨ましい…と囁かれた。
俺は芦原ほど深くジョンを想ってないから出来るんだ…と言った。


「ううん、課長はジョン君を大事にしてます!」


断言すると、テレビボードの端を指差した。


「あそこだけ、埃が少しも無かったです」


そう言って笑う。