マジマジと顔を見てたからか、課長がそれに気づいて首を傾げる。


「何だ?」



何だって、そりゃ課長がカッコ良すぎて見惚れてたんですよ…とは言えず。


「いえ、あの、面白いお店だなぁと思って。課長はよくここに来るんですか?」


話を逸らせておこうと別の話を始めた。
課長は「うん」と頷き、「ガキの頃から来てる」と言った。


「あそこにいるオジさんが同級生の親でさ。俺のことも今だに子供扱いするんだ」


厨房の中にいる店主を親指で差す。
坊主と呼ばれてたのはそれでなんだと思った。


「ここはキツネうどんに入ってる油揚げが美味くて。しかも、他の店よりも厚みがあるから噛み応えも十分なんだ」


それを食べたら他の店のは食べれないと言う。
どんなに美味しいのか楽しみになってきて、ゴクンと喉を鳴らした。


「他には何が美味しいんですか?」


クリアケースに入ったメニューを見ながら聞いた。


「いなり寿司も上手いよ。山菜寿司が中に入ってて、一つが結構大きいんだ」


「そうなんですか。お腹空いてたら食べれるけど…」


残念だけど今日は無理。
サービスエリアで食べた中華まんが、まだお腹に残ってる感じがする。


「また来たら食べればいい。キツネうどんだけで結構お腹に溜まる量だから」


それを聞いたら食べきれるだろうかと心配になった。
残すのもいけないし、最初に量を見て食べれそうになかったら課長に分けてあげようと思う。