今日はここへ来るまでの間、私なりに色々と考えた。
自分から課長の部屋へ行きませんか?とは言ったものの、本当に来て良かったのか…と。


課長の部屋に近づくにつれ、(言わなければ良かった…)と散々後悔しながら歩いた。
「ここだ」と足が止まった時は、その場で軽い目眩も感じた。


課長の部屋に通されたと知ったら、オフィスの先輩達にどんな仕打ちをされるか知れない。

それを思うと逃げ出したい気持ちも高まったし、今更ながら大胆だった…と深く反省もさせられた。



(とにかく今夜は飲み過ぎないようにしよう)


初訪問で飲み過ぎてお泊まりだけにはなりたくない。


「腹空いた〜!食べよう!」


課長の方は呑気で羨ましい。

私を最初から部屋に招くつもりでいたと聞いた時は驚いたけど、この余裕ぶりから察するに、女子を部屋に入れたのは初じゃ無さそうだ。



(当たり前じゃない。何言ってんのよ)


恋愛経験の少ない自分と一緒にしてはいけない。
課長はこの部屋と同じ大人なんだから。


「乾杯」と差し出された缶ビールに、スパークリングのりんごワインの瓶を合わせる。


「お疲れ様でした」


「芦原さんこそ、一週間お疲れ」


労われながら飲んだワインは、リンゴの風味がして甘い。
シュワッとした炭酸が喉の奥に沁み渡っていって、思わず悪酔いしそうな気がする。



「それって美味い?」