何だか可愛い感じもしてきて、つい笑いが溢れてしまう。
私も猫の置物を同じ様に部屋に置いてるから、課長の気持ちはよくわかる。



(なんだか似てる)


部屋のカラーは違うのに、何処か落ち着いてきた。

背中側になってる窓辺にも目を向けた。
大きなゴムの木の鉢植えが部屋の隅っこに置かれてあり、その横に大きめなテレビボードが並んでる。

テレビの横に見覚えのあるものを見つけ、吸い寄せられるように近寄った。


金糸を贅沢に使った織物で包まれたもの。
毎年出かける場所で、必ず目にするものと同じ。



(……そっか。一緒に居るんだ…)


キュン…と胸が狭まった。
自分には出来なかったことをしてる課長は、強くて羨ましいな…と思う。




「お待たせ」


背後から声がして背筋が伸び上がった。
キッチンでおでんを温め直した課長が、鍋を抱えて入ってくる。


「い…いえ!」


振り返って返事をしたら、一瞬だけポカンとした後で微笑まれた。


「座ってて良かったのに」


余裕そうな感じで言うと、ローテーブルの上に鍋を置こうとしてる。


(あっ…)


急いで近寄り、コルクで出来た鍋敷きを敷いた。


「サンキュー」


思ったよりも顔が近くて、またしても心臓の音が速くなる。



「い、いえ…」


サッと俯き、湯気の上がる鍋の中を見た。