(……でも、私は課長が信じたかったから……)


全てを話すと言ってくれた言葉を真実だと思いたかった。

課長の部屋へも訪問してみたかった。

私がミィと過ごした様な日々を、課長とジョン君も過ごしてるんだという証拠写真を見せて欲しかった。


それを接点として触れ合いが広がればいい…と、浅はかな期待が胸の奥にあった。

アルバムを見せてくれるだけ、金澤さんのことを教えてくれるだけだと思いながらも、どんどん希望が膨らんでた。


(変な期待が胸の内にある間は連絡しないでおこう。これまでの事なんて忘れてしまうまで課長の電話には出ない方がいい)


部下と上司の関係でいられればいいんだ。

それ以上は超えない方が傷付かないで済む。



スマホの画面が暗くなるまで見続けた。

電話のことなんて考えたくもなくて、バッグの中に押し込んだまま眠った。



月曜日の朝、知らん顔してたスマホを徐ろにバッグの中から取り出す。

課長からは土曜の午後の1回きりしか着信がない。

その後はきっと忙しくて、何度もかけたりは出来なかったんだろう。



(つまりはその程度の女だってこと。モテる課長にはもっと素敵な人がいる)


金澤さんのことを考えると泣きそうになる。

どんなに落ち込んでても仕事は待ってくれない。


今日からは未希も出勤すると言ってた。

悪阻がきたら仕事を代わって欲しいと頼まれてる。