車を飛ばして3時間。
辿り着いた名所で私は願った。


「どうか神様、お狐様、私に素敵な恋を授けて下さい!」


クリスマスの朝、早朝から家を出て参った場所。

そこはネット上でも有名なパワースポットと称される稲荷神社で、真冬にしては晴れやかな空の下、パンパン!と威勢よく柏手を打った。


『芦原翼(あしはら つばさ)』26歳OL。

彼氏いない歴丸5年。
大学卒業と同時に就職したオフィスで毎日をその場凌ぎ的に過ごしています。


私の夢は「結婚退職」
不器用な性格だから結婚後も仕事を続けようなんて無理。


「だから、お願い致します!経済力のある素敵な彼氏を授けて下さい!」


頭を項垂れて懸命に祈る。
邪念を振り払いひたすら願うこと3分間。


「よしっ、これくらい願えば十分だろう」


頭を振り上げて深い礼を一回と浅い礼を二回繰り返した。
くるりと社殿に背中を向ければ、眼前には深くて青い海が拡がってる。


「いい眺め〜!気持ちいい〜!」


スーッと大きく息を吸い込み、ハーッと思いきり吐き出す。
潮風が運んでくる潮の香りに癒されながら暫し佇む。



「いい所だなぁ」


私の住んでる所にはない景色。
青く澄んだ雄大な空と何処までも続くマリンブルーの海。
朱色の鳥居がその間に映えて美しさを倍増ししてるような気がする。


「やっぱりご利益を高める為に油揚げ持ってくるべきだったかなぁ」