『ほらっ、何してるのよ!あと20分で始まるわよ!』
その声にビクッと肩を跳ねさせた。
周りを見渡すけど誰もいない。
でも確かにゼテルアさんの声が聴こえたんだけどなぁ?
『見えるわけないわよ』
「えっゼテルアさん!?どこにいるの!?」
『どこって……天国に決まってるじゃない。それより早く!』
「うわっ!?」
そう声をあげたのは背中を押されたからだ。
そのまま体が勝手に進んで、景色が速く変わる勢いに私は悲鳴をあげた。
5分もしなかったと思う。たぶんそれ以下だ。
肩を上下させながら息を整えて、目の前の建物を見た。
……っ、もう着いた、よ。
ジェットコースター並の速さだった……怖かった。
「はあ、はあ、……っ」
『初日から遅刻とか有り得ないんだから。あゆなんは転入生としてこの学校に通うのよ。いい?
あゆなんの名前はこれから“佐來あゆな”だからね。そこ気を付けるように!
……分かった?』
頷きたかった。
でも頭がついていけてなくて。頭の中に無数の“?”と“!”が増え続く。
この声は私にしか聴こえないらしい。
走りながら(というよりは押されながら)耳元で聴こえるのだけれど、周りの人はなんの反応も示さなかった。
それに、私のことも見えてないようだった。
ただ通り風が吹いてそれを受けているだけ。
あのさ「わかった?」じゃないよ!?
黙って聞いてればだんだん頭がパニック起こしてるんですけど?!
「……それ、さっき話してくれてたっけ?」
『……ごめんなさい』
「ですよね~」
なんでこんな大事なこと言うの忘れてるのよ。
天を仰いで少し睨みつける。
そうすると『かわいい顔が台無し』と言われ、今度は舌を出した。



