「じゃ、行ってきます!」
「気を付けて行ってらっしゃい」
お互い手を振って笑い合う。
ゼテルアさんがお母さんみたく言うから、なぜだか泣きそうになった。
それをグッと飲み込んで、扉に向き合う。
アンティーク調の扉にに手を掛けて押し開こうとすると、触れる前に開いた。
小さな隙間から眩しすぎる白い光が射し込む。
目を細めてその中を歩いていく。
「あゆなん!バレないようにね!」
背中から聞こえる声に頷いてひらひらと手を振った。
バレなきゃいいんでしょ。大丈夫。上手くいくって。
「バレたらっ、強制終了だからね!」
「はーい。分かってる、て……エッ!?」
一歩一歩進んでいく最中、最後に聞き捨てならないことを後ろから聞いて、勢いよく振り向いた。
けど、目の先には閉ざされた扉だけが残されていた。



