音が聞こえる。
これは目覚ましとは全く別のものだ。
なんだか懐かしいけど切ない音。
……そうだ。
2年前、おばあちゃんの病室で聞いていたあの心電図の音。
次第に感覚が研ぎ澄まされてきたのか、消毒液っぽい匂いが感じとれるようになってきた。
やっぱりここは病院だと確信する。
重いまぶたをゆっくり開けてみた。
目線の先には白い天井と蛍光灯。
少し顔を明るい方へ傾けるとカーテン越しから漏れる太陽の光が眩しくて目を細めた。
ふと、手に違和感を覚え、そちらに視線を移すと寝顔が見えた。
安らかに眠っているその人に握られている手をそっと抜き取り、頭を撫でた。
触れたかった。
ただ、ただ、愛おしい。
幸太郎。起きて。
まだ喋る気力がない私は心の中で起こしてみるけど、動く気配もないからしばらく寝かせてあげることにした。



