おばあちゃんが嘘をついているようには思えない。
でも、なんで私を天国に行かせてくれないのだろう。
私は死んでるのに。
「あーちゃんは死んでないのよ」
「え?」
「だから、いってらっしゃい」
くるっと向きを変えられると目の前の白い扉と対面する。
それをおばあちゃんが開けると強い風が一気に入り込んだ。
肩を2回やさしく触れたおばあちゃんを見るとふわりと微笑んだ。
「おばあちゃん、それは本当?」
「大丈夫。私が保証するから。ちゃんと前を見て進んで行きなさい。扉の向こうに一歩でも出たら絶対振り返らないでね」
「なんで?」
「おばあちゃん寂しくなっちゃうから」
「私も寂しいよ?」
「大丈夫よ。おばあちゃん、ちゃんとここからあなた達のこと見守ってるから。みんなで見守ってるから」
背中を押される感覚に足が一歩踏みでる。
強い風が体にまとわりついて引っ張られた。
ちょっと綱引きをしているみたい。
そんな感覚。
「あーちゃん、いってらっしゃい!」
その声に振り向いてはいけないと思いつつ心が振り向きそうになる。
自分の心と闘いながら前へ前へ。
──行ってきます!
一体自分がどこに向かっているのかも分からずにそう心の中で応える。
徐々に見えてきたのは眩しい光の球体。
それに触れると声が聞こえてきた。
私を呼ぶ複数の声が。
溢れ出す涙が知らせる。
これから起こる奇跡に──。



