─コンコン。
ドアを叩く音に我に返る。
振り向くと亜優奈の母親がいた。
「幸太郎くんいつもありがとうね」
「いえ、あ、こんちは!お邪魔してます!」
慌てて立ち上がってそう言うとおかしそうに笑われた。
その姿が亜優奈とそっくりだった。
亜優奈より低い背丈だが、シルエットはどこか似ている。
笑い方は特に。
「あーちゃん早く起きて幸太郎くんに感謝しなきゃね」
少し伸びた前髪を左右にかき分けて微笑む。
いいんです。感謝なんて。別にいい。
俺は何もしてないし。
俺より家族とか浜仲とかそっちに感謝して。
だから早く目を覚ませよ。



