『な、に泣いてるのよ……っ』
……私、泣いてる?
なんで、泣いてるんだろう。
頬に温もりを感じた。
歩未の手だった。
その手が流れている涙をすくうように肌をなでた。
その瞬間、声が聞こえた。
すごくやさしい、透き通るほどの声音が。
それがとても、心地良くて……。
目の前は暗闇だった。
いつの間にか目を閉じてしまったらしい。
でも、微かに歩未の声がする。男の子の声も。そばにいる人の声も。
『起きて!』とか、『頑張って!』とかたくさんの叫び声が体中に響いてる。
だからね?
私まだ起きてるんだって。
ちゃんと聞こえてるよ?
でも、見たい景色が見れないんだよ。



