「っ、何してんのッ!?」
「え何って、」
「はやくっ逃げなきゃっ!」
歩未の顔が歪んでそう叫ぶ。
──ねえ、神様。私の行動は間違ってないですよね?
横断歩道の信号が青に変わった瞬間だった。
小さな男の子が元気よく飛び出してきたのは。
その子の母親が名前を叫んだ。
もうすぐそこまでスピードを落とせられなくなった操縦不能な大型トラックが迫ってきていた。
それなのに私にはすごく遅く見えていた。
不思議なくらいに。
だから、絶対助けられるって。
こんな自信は一体どこから生まれてきたんだろう。
今の私は無敵って思ってしまうほど助けられる自信に満ち溢れている。
勢いよく固く掴まれていた手を剥がした。
──大丈夫。こんなに遅いんだもん。絶対に助けられる。だから安心して歩未。
私は小さな男の子に向かって走っていった。手を広げて身を守るように堅く包んだ。
その瞬間、何もかもゆっくりに見えていた風景が急に速くなった。
音も、動きも、何もかも。
目に見えているもの全てが、本来の速さに戻っていた。



