「じゃ、私たちこっちだから」
「うん。今日は本当にありがとう。凄く助かりました」
2人に頭を下げて言う。馴染みのない言葉遣いを添えながら。
顔を上げると笑顔の2人が私を見ていて泣きそうになる。
なんで死んでしまったのかな、なんてふと思ってしまった。
ここにいるのは『私』なのに2人が少し違う表情を向けてくるから苦しくなる。
このミッションは凄く現実を味わされるよ。
2人にもう一度頭を下げて坂へ続く道へ行く。
しばらく歩いて振り向くと歩未と幸太郎の背中が見えた。
また言い合いをしているようだ。
その様子に黒い陰が心を覆った。
なんか、私がいなくても十分楽しそう……。
私がいても居なくてもこうして言い合うことが出来るんだと。
むしろ私は邪魔な方だったのかもしれない。
だって、幸太郎が笑ってる。
あんな風に笑うなんて私は知らない。
もしかしたらアイツは──。
「また、明日ね」
姿が見えなくなった景色に小さく呟いて、私はまたケーキ屋さん方面へ足を進めた。



