「……あの子の名前、何だろう……」 気づけば、俺は何も知らない。 あの子の名前も、歳も。どこに住んでいるのかも。 ……メアドくらい聞くべきだった。 忘れてたのは、普段そういうことに自分から動く機会がないからだろうか。 脳裏に彼女の白いワンピースの裾が揺れる。 寄せては返す波を、途方に暮れながら見つめていたとき。 耳がさざなみ以外の音を捉えた。