あの子、"ヨウ兄ちゃん"って言ってたけど……似てないな。
父親似と母親似に分かれてるか、もしくは血の繋がらない兄弟か……。
「お兄さーん。"ねっちゅうしょう"になっちゃうよー」
おいでおいでー、と ひょこっと顔を出しているその子に呼ばれ、俺は店の中におじゃました。
中はほどよく涼しくて、火照った体を優しくいたわるようだった。
「あのさ。……えっと、君、」
「あ、ぼくはラメル。深海ラメル!」
「……ラメルは、"お兄さん"と似てないんだね?」
前を歩くその子につい聞いていた。
俺の質問にラメルはきょとんとした後、朗らかに笑った。
「よく言われる!でも、ヨウ兄ちゃんはヨウ兄ちゃんだし、お母さんはお母さんだもん」
ごく自然に、簡単なことのようにラメルは言う。