「……大丈夫?」
しばらくして体を離した少女が、心配そうに俺を見つめる。
「大丈夫。……すごく効いた」
「そっか。よかった」
ホッとしたようにふわりと笑う少女は、まるで蕾を開いた花のようだった。
「あ!!」
「どうしたの」
すると突然少女が口に手を当て、大声を出した。
大事なことを忘れてたと言うように。
「そろそろ夜が来ちゃう……。私、もう帰らなきゃ」
「え、」
待って。
その言葉は声にならず。
焦ったように少女は立ち上がったと思えば。
あっという間に駆けて行ってしまった。
それはまるで、吹き抜ける風のように軽やかで。
────また、会いたい。
伸ばした手をゆっくり下ろし、赤紅に沈む夕陽を見ながら、そう思った。