「……ん……」

潮騒の音に目を開く。

少し咳き込んだ後、温かい砂の上に自分の存在を感じ取る。
服はまだ体に張り付いてはいるが、あらかた乾いたほうだろうか。

あのまま気を失った俺を、誰かが救いあげて砂浜に寝かせてくれたらしい。

……一体誰が?

「あ、……起きた?」

せせらぎのように透き通る声がした。

さらり、と 墨の川が流れた。
青ガラスのような瞳と目が合う。

ぱっちりした、垂れた目元。
きめ細かく、真珠のように白い肌。
豊かな髪はしっとりと濡れて艶めいている。

同い年くらいの清楚な雰囲気の少女が顔をのぞき込んでいた。

黒髪なんて久しぶりに見た。
周りの女子は、茶色とかミルクティー色とかダークブラウンの娘が多かったから。