「……ハァ」

口元を拭うと、手の甲に赤っぽいピンク色がべたりと付く。


ベッドに座ったまま、虚ろな目で ラメ入りのそれをぼんやり見つめる。




……また、何も分からなかった。




彼女と別れた後急にべたつくような不快感に襲われ、自宅まで急いで帰った。
この辺では大きめの、垢抜けた雰囲気の白いマンション。


体を丸めて体育座りをし、膝の上におでこを乗せる。

深く静まり返った家の中は。
まるで人が訪れない森のようで。

3年前から慣れたはずなのに。
静けさに呑み込まれそうで、俺は逃げるように家から出た。