「何薄笑いなんてしてんの?」
髪の毛がまた引っ張られた。
痛い痛い、でもそれでも我慢。
どうやら、本当の本当に
彼がくれた感情が真面目だった時期の私を
引き出して連れてきてしまったらしい。
彼がただ私の意見にあったとか
中途半端な弁解が崩れていく。
今頃、鍵を開けて
私を待っているんだろうか。
遅いなと思って帰ってしまっただろうか。
早く、早くあの人と話したい。
あの人と言い合いたい。
それで最後に誉めてほしい。
ついでにちゃんと、名前も教えてほしい。
どんな日々を送ってきたのか教えてほしい。
こんなところにはまって抜けられなくなった
私の体をどうか、引き上げてほしい。
そうして、その手で私を引っ張ってほしい。
そうしたら、私はこんな風にならないで
きっと、外見も中身も修正して
真面目に生きていける。
助けてほしいって、
格好悪かったとしても、言える。
ぐっと寧々の方を見返す。
この立場でずっといたかったなと思う気持ちは
ゼロじゃないし少なくもない。
でも、同時にここから離れたいとも
廃れていた私の心がそう言った。
そうさせたのは、あのまだ会ってから
大して時間のたっていない、
一人の名前も分からない教師だ。
笑えちゃう。
でも、この気持ちがいとおしくて
今ならもしかしたら、引き返せるような
足を洗えるような、
そんな気がした。


