「そうこなくっちゃ」
理科準備室のドアを開けて
彼は手を差し出してくる。
「はい?」
握れと言う意味なのか
荷物を持つということなのか、
判断しかねて顔を上げると
「さっきの子達から逃げるのには
身軽な方がいいでしょう?」
バックを軽々と持ち上げる彼。
重いの、分かってくれてたんだ。
口が緩みかけて
慌てて引き締める。
「ありがとう」
「裏口だからね?」
「はーい」
身一つで私は階段を降り始めた。
一緒にいたらおかしいからね。
少し気分が良くて鼻歌まで歌いかけた私は
すぐに足がすくむことになる。
「どこに隠れてたかは知らないけど、
私たち、あなたの匂いには強いの」
階段の下、
腕を組んですらっとした足を広げ
仁王立ちで寧々が立っていた。
「見た目変えれば大丈夫だと思った?」
ねちっこい声が直ぐ様私にまとわりつく。
「外見くらいであなたの中身は変わらないのよ」
掴まれた手には
既についていたアザが色濃く浮かんでいた。


